アブストラクト(50巻2号:神奈川歯学)

神奈川歯学

Japanese

Title : 頭頸部扁平上皮癌における副作用の少ない薬物療法の開発 ~育薬的アプローチ~
Subtitle : 特別研究員報告
Authors : 宮本千央
Authors(kana) :
Organization : 神奈川歯科大学口腔科学講座薬物応用口腔腫瘍学分野
Journal : 神奈川歯学
Volume : 50
Number : 2
Page : 98-102
Year/Month : 2015 / 12
Article : 報告
Publisher : 神奈川歯科大学学会
Abstract : 「Abstract」これまでに著者らは, 頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を含む種々の癌腫および肉腫において分泌性のケモカインであるCXCL14/BRAKが抗腫瘍作用を示すことを報告してきた. 一方, RhoA/ROCK経路は腫瘍細胞で過剰に活性化されており, 腫瘍の進展や転移を促進することが報告されている. さらに, RhoA/ROCK経路の過剰な活性化は, 細胞内における物質輸送の恒常性を損なうことが示唆されている. そこで, 我々は既に血管攣縮の治療薬として臨床応用されているROCK阻害剤FasudilによるRhoA/ROCK経路の阻害が, BRAK分泌および腫瘍進展に及ぼす影響について検討した. 初めに, BRAK安定発現細胞株(MC57-BRAK)を作成し, RhoA/ROCK経路を刺激したところ, BRAKの細胞外分泌が有意に抑制されることが確認された. また, この細胞外分泌の抑制は, Fasudil添加により阻害された. 次にMC57-BRAKおよびHNSCC細胞株であるHSC-3を用いてFasudil添加培養を行ったところ, BRAKの細胞外分泌が添加濃度依存的に亢進することが確認された. さらに, HNSCC細胞株3種類(HSC-2, HSC-3, HSC-4)においてRhoA/ROCK経路の分子に対するsiRNA導入による阻害によりBRAKの合成促進が認められた. さらに, FasudilによるBRAK細胞外分泌促進効果のin vivoにおける腫瘍進展への影響を検討するために, マウスによる腫瘍移植実験を行った. HSC-3をBALB/cAJcl-nu/nu(メス)背部皮下に移植した. 腫瘍定着後, 半数のマウスにFasudilを投与した. Fasudilを投与した腫瘍は投与しなかった群と比べ腫瘍増殖は有意に抑制された. これらの結果は, MC57-BRAKとMOCK細胞を同様に移植し, Fasudilの影響を検討した実験系でも, 同様の傾向が観察された. 本研究結果は, FasudilがBRAKの分泌促進を介して線維肉腫および頭頸部扁平上皮癌の増殖を抑制したことを示しており, 既に臨床応用され安全性が確認されているFasudilが抗腫瘍薬として『育薬』できる可能性が示された.
Practice : 歯科学
Keywords : CXCL14/BRAK, Fasudil, 頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)